元気いっぱい こどものお口

乳幼児期の口腔管理は、おいしく食べて、楽しくおしゃべり

食べ方・ぶくぶく・生活習慣
3つのツボを押さえてお口の元気度アップ

私たちの間では「ごはん(お米)は、よーくかんで食べるとあまーくなるよ」と、おじいちゃん・おばあちゃんのそのまた昔から、代々語り継がれてきました。実際、おじいちゃん・おばあちゃんが言う通り、食べ物は、かめばかむほど味わいが深くなり、おいしさが増していくものです。

それでは、よーくかんで食べている自分の口元を想像してください。よーくかむとき、顎は開いて閉じて、ひっきりなしの大活躍。唇はしっかりと閉じられ、頬は伸び縮み。舌は右や左、上や下に食べ物を転がして、さらに甘いの辛いの、苦いの酸っぱいのなどなど、おいしいさを感知するのに大忙し。そして28本(成人の場合)の歯がおいしいごはんをしっかりキャッチして、噛んで、砕いて、すりつぶします。顎、舌、頬、歯など、口元のいろいろな部位がじょうずに協力しあって働くことで、はじめてよーくかむことができるのです。

このとき、もう少しだけお口の中に注意を向けてください。かめばかむほどに、だ液がジュワーッと出てきているのがわかりますか?

「お口の健康」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは「むし歯」と「歯みがき」ですが、今回はこの「よーくかんで」と「だ液」に注目していきたいと思います。

さて、おしゃべりしているときや遊んでいるとき、テレビを見てるときや寝ているとき、わたしたちのお口の中は、ほぼ中性(pH7)に保たれています。ところが、食べ物や飲み物が入ってくると、中性のお口は一気に酸性へと傾きます。そして、酸性の度合がpH5.7を過ぎたあたりから歯の表面が溶けはじめます。さらに、この酸性の状態の下では、そもそものむし歯の原因である、むし歯菌の活動も活発になります。そして。この酸性の状態に長くさらされた健康な歯はむし歯へと蝕まれていくのです。

ところが、私たちのからだにはだ液という頼もしい力が備わっています。いったん酸性に傾いたお口の中は、だ液の力によって、中性へと押し戻されていきます。よーくかむときに出てくるフレッシュなだ液は酸性を中性に押し戻す頼もしい力をもっていて、この力はどんな人工物にもかないません。また、嬉しいことにだ液には溶けはじめた歯の表面を修復して、元の状態にもどす力も備わっています。

わたしたちの口の中は食べたり飲んだりすることで、否応なしに酸性となります。その結果、飲食の度に歯の表面が少しずつは溶けだしてしまします。しかし、しっかりと咀嚼することで出てくるフレッシュなだ液の力が毎度この緊急事態を収拾してくれているのです。

元気なお口、健康なお口とは、たんにむし歯が無い、と言うだけではなく、だ液の力(押し戻す力と修復する力)が十分に機能しているお口ということができます。

どうでしょう?「食べたらみがく」の前に「よーくかむ」ことで、フレッシュなだ液をたっぷり出すことに目を向けてみませんか。食べている最中の、その食べ方がお口の健康への一番の手がかりなのです。さぁ!! みんなで「よーくかむ」と「だ液の力」のパワーアップに取り掛かりましょう。

だ液の力は、かむ力に支えられています。ですから、かむ力をしっかりと身につけることがお口の健康の第一歩です。前歯で噛みきって奥歯ですりつぶし、お腹のなかにとどける。この、かんで飲み込むという一連のプロセスには、先にちょっぴり触れたように、顎・唇・頬・舌、そして歯が団結して、協力することでじょうずに機能しています。まずは、顎や舌、頬の動きを、実際に確認してみましょう。

1. 耳たぶの前の頬の辺りに手を当てて、グッと噛みしめてください。プクッと動くのが咬筋(こうきん)と云う筋肉です。この筋肉に手を置いて奥歯を噛み、プクッと動くのを感じてみましょう。

(註)咬筋(こうきん)がプクッと動かない場合は奥歯で噛んでいない可能性があります。子どもの成長によっては乳臼歯がまだ生えていないこともあるので注意してください。また、既にむし歯が原因で痛みがあり、しっかり噛めない場合があります。少しづつ、確認しながら行ってください。

2. 舌の全体を上顎に押し付けてみましょう。それができたら、タンタンと舌を鳴らしてみましょう。ちょっぴりお行儀が悪いですが、リズムに乗ってタンタンタン。舌の動きがパワーアップします。

3. 耳たぶを人さし指と中指で軽くつまみます。そのまま両手で優しく頬を包んでマッサージしてください。だ液腺が刺激されて、ジュワーッとだ液が出てくるのが実感できます。

次に、顎や頬、舌や唇をじょうずに協力させながら動かしてみましょう。口元を総合的に使いながら、かむ力をパワーアップするには、ぶくぶくうがいが効果的です。また、ぶくぶくうがいは、歯みがき効果をしっかりサポートして、清潔なお口を保つためにも大切な運動です。目標は、大きく頬を動かして、奥歯の奥まで勢いよく、お水をぶくぶく動かすことですが、まずは、お水ではなく、空気を使ってブクブクブク・・・。

インターネット環境のある方は、ぜひ、PC、スマートフォンからここにアクセスしてください。無理せず、ご自分のペースで、ちーちゃんと一緒にぶくぶく体操にチャレンジしてください。

大きく頬を動かして勢いよくお水を動かすには、たくさん頬が膨らんで、唇がギュッと閉じられていなければできません。毎日の歯みがきのぶくぶくうがいを習慣にすることで、唇に力がつき、頬にストレッチ効果が働きます。

唇に力がつくと、普段からしっかりとお口を閉じておくことができるようになり、鼻呼吸の習慣が自然と身につきます。このことで、お口の乾燥を防ぎ、だ液力が保持され、また幼児期の鼻腔の成長もしっかりサポートされます。

唇の力が十分でないと、知らず知らずのうちに、お口がポカーンと開きっぱなしになり、鼻で息をするのではなく、口で息をするという口呼吸の習慣がついてしまうことがあります。

私たちの鼻には外界からの異物(ウイルスなど)をフィルタリングする機能が備わっていますが、口にはそのような機能はありません。このため、口呼吸が習慣化されると、冬場の乾燥した季節などには風邪をひきやすなるなど、からだの免疫機能が十分に働かないことがあります。しっかりと閉じておくことができる唇の力はお口の健康にとどまらず、からだ全体の健康のためにも大切な力です。一方、頬のストレッチは表情筋をリラックスさせ、豊かな表情と素敵な笑顔の基礎をつくります。

からだ全身の健康のためにも、普段のコミュニケーションを楽しく素敵な時間にするためにも、子供だけでなく、保育者や保護者の方々も一緒になってぶくぶく体操にチャレンジしましょう。

(註)ぶくぶく体操やうがいは、口で呼吸をしている子供には少し辛いかも知れませんが、子どもの時期に鼻で呼吸をする習慣を身に付けないと鼻腔の成長が止まってしまいます。少しずつ鼻で呼吸する習慣が身に付くよう、ぶくぶく体操ででトレーニングしましょう。しっかりと唇を閉じ、ゆっくりと鼻で息をしながらブクブクブク!! 一回でも二回でも、できるとこからトライ。少しずつ回数を増やし、動作も大きくできるように練習しましょう。

(註)テレビを見ているときなどに、ぽか?んと口を開けている子供は、唇の力が弱い場合があります。口を開けている時間が長いと、口の中が乾燥し、だ液の力も低下します。このとき「口を閉じなさい」と注意しても、そもそも閉じるための力が弱いため、効果的ではありません。みんなで一緒に楽しくぶくぶく体操をすることで、唇に力がつくようになり、自然と口が閉じられるようになることを目標にしましょう。

さぁ、しっかりお口を閉じて、ぶくぶく体操が毎日の習慣になりましたか?

歯みがきのあとのぶくぶくうがいは、お口の隅々まで勢いよくお水が動いていますか?(ぶくぶくうがいのときに口に含む水の量は、大人30ml、子供15mlが目安です。最初は少し物足りなく感じるかも知れませんが、この量のお水をお口の中で勢いよく動かせるようにしましょう)そして、お口に中はフレッシュなだ液でたっぷりと覆われていますか。

しっかりかんでおいしく食べることで、たっぷりのフレッシュなだ液がお口の健康をがっちりサポートしてくれます。「食べたらみがく」の一歩手前、食べてる最中に「よーくかむ」ことでお口の健康、ワンランク、ジャンプアップです。

最後になりましたが、お口の健康について、もう少しだけお知らせしておきたいことがあります。

まず、だ液について。酸性に傾いたお口を中性に引き戻してくれて、溶けはじめた歯の表面をしっかりと修復してくれるだ液の力ですが、残念ながら、私たちが寝ているあいだのだ液の分泌量は起きているときに比べてかなり減少してしまいます。つまり、寝ている間のだ液の力はあてにできません。また、だ液の中和する力は決して瞬時に酸性から中性へと中和してくれるものではありません。だ液の力には個人差がありますが、食べ終わった時点から、30分、1時間をかけて酸性を中性にもどしていきます。このため、四六時中、ダラダラと食べ続けていては、だ液の力が追いつきません。

これらのことから、就寝直前の飲食はひかえるようにしましょう。また、寝る前の歯みがきは一日の歯みがきのうちでいちばん丁寧に行いましょう。加えて普段からダラダラ食いには注意しましょう。

こうしてみると、お口の健康は生活習慣と深く関わっているといえます。

つぎに、むし歯と歯周病は細菌が原因だということです。このことは、細菌の感染を回避できればこれらの病気には関わりなく過ごせるということです。現在、むし歯菌などの口腔内への定住は3歳頃と言われています。つまり、3歳までをむし歯菌と無縁な環境で過ごすことで、以降その子供の抱えるむし歯のリスクを最小限にできるということです。

一方、昨今の研究で歯周病菌は糖尿病や心臓疾患といった全身病とも深い関係にあることが指摘されています。いづれも、原因菌の感染元は「おとな」であることに間違いないと考えられます。

今日、身近にある歯科医院でも歯周病菌やむし歯菌の細菌検査の提供をはじめています。機会をみつけて、保育者、保護者の皆さんに細菌検査を受けていただくことをおすすめしておきたいと思います。

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